午後の昼下がり、私は縁側に座っている。
空を見ると、電線にスズメが止まっていて、その向こうの空は水色で、
スカイブルーという絵の具の具合にピッタリで、
そんな私にスズメが、こんなに天気が良いのだし、どこか出かけてみてはどうですか?
と、ピーチクパーチク話しかけているような気になったけども、
それは私の思い過ごしだろう。
私は、キュウリが嫌いだ。
あの青くさい味も匂いも、ゴツゴツとした形も濃い緑色も、
とにかく嫌いで、サンドイッチに挟まっていれば器用に取るし、
スーパーなどで見かけても見ないふりをする。
キュウリも私のことを恐らく何とも思っていないだろう。
そんなことを考えながら、
ふと足元を見ると、アリが何か運んでいる。
恐らくは今日のご馳走だろうけども、それを見ていた私はそのアリを潰したくなった。
それは、綿矢りさの「蹴りたい背中」のような感情かもしれないし、
トルーマン・カポーティの「冷血」のような感情かもしれなし、
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」に出てきた、蜘蛛を救ったカン陀多かもしれないけど、
そのどれでもないかもしれない。
私はアリを潰すこともなく、キュウリを好きになる努力をするわけでもなく、
縁側に座り続けている。
スズメは気がつくと、どこかへ行ってしまったし、
私の目の前にサソリが現れることもないだろう。
私はスーパーマーケットに行こうと思う。
勿論、今日も私はキュウリの無視をする。
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