その本屋に初めて入ったのは、中学生ぐらいのときだったと思います。
店内は新刊やら返本を忘れた本やらで溢れかえり、それでいて暗く、さらにカビくさいというもので、
でも、中学生でもエロ本を売ってくれるという店で大変に重宝していたお店で、借金があるだの、店主に名前を覚えらると名前で呼ばれるだのとまぁ、本当に変なお店でした。
その古本屋のおじいさんは、奥の方にいつも座っていて猫と話をしておりまして、今日は寒いねぇーお客さんが来ないネェーなどというのですが、
私がいるのだから客はいるはずですが、まるでいないように話をしては、そういったことはそれほど問題ではないようでしたし、それが普通の光景として馴染んでいました。
そんなおじいさんですが、私たちの欲しい本は絶対に探してくれると評判で、
例えば恋愛の悩みを言えば、そこの上から2つ目、会社の悩みを言えば、左側の下にあるやつ、家族の問題はコレ、エロ本ならこれだ!絶対!!となんでも本を紹介してくれました。
そのおじいさんがいつも猫に話していたことがあります。
本はヒントをくれるけど、それはヒントで答えじゃないよ。
本は答えをくれないよ。
本を読んで、そうだ、その通りだと思ってもそれは嘘。
いつか自分で悩んで考えてそれでハっと答えが出たときに、その本に書かれていることの意味がわかるってもんだ。凸と凹みたいなもんだね。
だから、いくら本を読んだって答えがわからないことばかりだ。
それを聞いていた私が、ならばその答えの出し方がわかるような本はないのですか?と口を挟むとギョっとして、そんなものがあるもんか、
あるとすれば、それは自分で書くしか無いはずじゃないか。馬鹿者。
と答えて、それでも、それでも、もしもキミが何かを書こうと思うならば、それはきっと誰かのヒントになるだろうね、と言って、
再び猫にご飯を食べようかねーお散歩に行こうかねーと話かけていました。
その間、猫は寝てみたり、そっぽを向いてみたりしていました。
誰か、プレゼントして下さい!
0 件のコメント:
コメントを投稿