2011/03/05

花が咲く

いつの時代にも、どこの世界にも、天才や鬼才と呼ばれる者はおります。
例えば、バッハやモーツアルト、ベートベン、ゴッホ、ミケランジェロ、ダヴィンチ..。
私たち、人には想像もつきませんが、鳥の世界や犬の世界、猫の世界、植物の世界にだって、そういった天才は現れるものです。
その植物もそうでした。
その植物は、ある人のアパートで大切に育てられていました。
主人は、家に帰ると水をやり、日中は陽のあたるところへ移動させ、今日あったことを懸命に話かけたのでした。
会社の愚痴や友達や同僚の悪口、社会に対する不満、不安..。
主人が毎日面倒を見ていることもあって、その植物の葉は青々しく育っていきました。
しかし、その植物の葉は光合成をするだけのものではありませんでした。
その植物は葉を通して、人が言うことを理解出来たのです。
植物は毎日、主人の話を聞き続けました。
しかし、その植物は聞くことが出来ても話すことや書くこと、歌うこと、踊ることは出来ません。
その植物は思いました。
もしも手があれば愉快な物語で人を勇気づけることが出来る、
もしも足があれば踊って夢を与えることが出来る、
目があれば世界がどれだけ美しいか確認することが出来る、
鼻があれば香りを楽しむことができる。
そして、口があれば、それをこの人に伝えることが出来る。
だから、その植物はせめて、せめてと思い、最高の美しさと香りを想像し表現し、
気づいてもらうと、伝えようと、
花を咲かせたのでした。

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